TVer広告は“マス広告”?“デジタル広告”?──広告費の考え方から見るメディアの革新性
2025年3月15日
きっかけは、とある配信ドラマから
最近、弊社でクリエイティブを担当させていただいたあるドラマがTVerで配信されており、その本編をチェックしようと再生した際、冒頭に広告が流れてきました。
その瞬間、「この広告って、広告費としてはどう計上されるのだろう?」とふと考えたのです。マスメディア広告ではないだろうとは思いつつも、TVer広告の扱いが業界的にどう分類されているのか、改めて調べてみることにしました。

TVer広告の特性を整理する
まず、TVer広告は明確に「インターネットを通じて配信される動画広告」であり、スマートフォンやパソコン、コネクテッドTVといったさまざまなデバイスで視聴されています。
広告フォーマットはスキップ不可のインストリーム型が基本で、番組本編前や途中に挿入され、視聴者の注目度が高いとされています。
さらに、TVerはファーストパーティーデータを活用したターゲティング配信が可能で、居住地や年齢層などを踏まえて高精度な広告配信を行っている点も、従来のテレビ広告との大きな違いです。
では、広告費としてはどう位置づけられるのか?
TVer広告は技術的には「デジタル広告」に分類されますが、広告業界の大手媒体である電通報では「新しいマス広告」として紹介されています。
月間4.9億回という膨大な再生回数、そしてテレビ局が提供する安全で高品質なコンテンツ内で配信されるという構造から、従来のテレビCMに近いリーチ力とブランドセーフティを両立している点が、ハイブリッドなメディアと評価されている理由です。
これは、単純にインターネット広告として予算配分すれば済む話ではなく、「テレビのようなメディア」としての力も持っているからこそ、マーケティングの設計において慎重な判断が求められる媒体だと感じました。
テレビコンテンツの強さ、そしてTVerの革新性
広告の分類の話とは別に、TVerというプラットフォーム自体に対して、私は非常に高い評価を持っています。
いわゆる“マスメディア”が持つコンテンツ制作力、特にドラマやドキュメンタリーといった長尺の作品群は、依然として高いクオリティを誇っていると感じます。
そのような上質な番組を、ユーザーが好きな時間に、好きな場所で楽しめるという“オンデマンド視聴”の仕組みは、視聴体験として非常に優れていますし、その中で適切な広告を表示できるというのは、広告媒体として見ても非常に革新的です。
ユーザー体験を損なうことなく広告を配信できるTVerの構造は、まさに現代的な広告プラットフォームの理想形の一つだと感じました。
おわりに
TVer広告が「マス広告」なのか「デジタル広告」なのか、その問いの答えはひとつではないのかもしれません。
ただ、確かなのは、こういった“分類の境界線”を考えること自体が、メディアや広告の変化を読み解くヒントになるということです。
私たちは日々、さまざまな現場に立ち、最新の広告やメディアに触れながら、その中で得た知見をクライアントに還元していくことを大切にしています。
これからも、変化するメディア環境にしなやかに対応しながら、本質的なコミュニケーションを追求していきたいと思っています。
株式会社HET
長谷川 嵩