ガチャガチャが止まらない──トイカプセル市場の今と、企画の裏側

2025年3月20日

はじめに

最近、クライアントとの打ち合わせのなかで「この製品、カプセルトイにしたら面白いんじゃない?」という話題が持ち上がりました。

半分冗談のようなやりとりでしたが、調べてみるとトイカプセル、いわゆる“ガチャガチャ”市場が今とても活況だということがわかってきました。今回はその市場動向や実際の事例、そしてカプセルトイの持つ広告としての可能性について、調査を踏まえてまとめてみたいと思います。

第4次ブームと言われる今のカプセルトイ市場

一般社団法人日本カプセルトイ協会(JACTA)の発表によれば、2024年度のカプセルトイ市場は、メーカー35社へのヒアリング調査に基づき、製造元出荷ベースでおよそ1,410億円に達したとのことです。

前年度(2023年度)の1,150億円と比べて122.6%の伸びを示しており、出店数も全国で700店舗以上。リリースされる新商品も2023年度は月500種類程度だったのが、2024年度は月700種類と、約1.4倍に増加しています。

SNSでの拡散性や、“推し活”文化と結びついたコレクション性の高い商品が受けており、カプセルトイはもはや「広告としての価値を持つプロダクト」として企業にも注目されています。

なぜ今、トイカプセルなのか?

ガチャガチャがここまで拡大している背景にはいくつか理由があります。

まず、出店のしやすさ。人件費や内装工事が不要なため、空港や駅、商業施設の空きスペースに設置しやすく、導入コストが比較的低いという利点があります。

また、インバウンド需要が回復する中で「日本らしいお土産」としての需要も高まりを見せており、企業プロモーションとしての価値も上昇しています。

こんな企業まで?話題の事例紹介

調査の中で特に面白いと感じたのが、ヤマザキマザックによる事例です。

2024年11月、ヤマザキマザックは自社の工作機械5機種を1/64スケールで精巧に再現した「工作機械ミニチュアコレクション」を全国のカプセルトイ専門店などで発売しました。

普段はあまり一般生活者の目に触れることのない“工作機械”をあえてミニチュア化し、その造形美や技術力をカプセルという形で伝えるという、極めてユニークな取り組みです。

製品の質感・ディテール・カラーリングまで精密に再現されており、知名度向上・教育用途・ファン層の拡大など、複数の狙いを兼ね備えたプロモーションとなっていました。

ロットは多い。でも使い方しだいで化ける

トイカプセルをOEMなどで制作する場合、最小ロットは概ね20,000個前後からというのが一般的です。

この数をどう活用するかというのが1つのハードルになりますが、たとえば企業の周年記念品や展示会のノベルティ、お祭りイベントでの景品など、配布先を設計すれば有効活用は可能です。

特に地方企業の場合、地元のお祭りやフェスでの“地元キャラ”のカプセル展開は、地域活性化にも繋がる面白い取り組みになり得ると感じました。

おわりに

何気ない会話の中から立ち上がったトイカプセルの企画でしたが、調べていく中でその広告的な可能性や市場としての奥深さに気づかされました。

「かわいい」「面白い」「誰かに見せたくなる」。
そんなシンプルな感情を呼び起こすトイカプセルは、今や立派なブランドプロモーションの手段のひとつ。

私たちも今後、こうした“やわらかくて強い企画”をクライアントと一緒に仕掛けていけたらと考えています。

株式会社HET
長谷川 嵩