テレビ広告とネット広告の狭間で──私たちが今、悩んでいること

2025年3月9日

はじめに

最近、テレビ広告のご相談をいただく機会がありました。普段からイベントやネット広告、クリエイティブ制作を中心に活動している弊社にとって、テレビ広告の制作案件は正直なところ多くありません。ですが、こうしたテーマに触れるたびに、今の広告業界の変化や、お客様との向き合い方について深く考えさせられます。

 

広告費の流れは変わった

電通の「日本の広告費」によれば、2019年にはインターネット広告費がテレビメディアを初めて上回りました。それ以降もインターネット広告は拡大を続け、2024年には広告全体の47.6%以上を占めるまでに成長しています。一方で、テレビメディアの広告費は年々減少しています。

電通報「2024年 日本の広告費」より

それもそのはず。多くの人が「テレビを観る時間よりも、スマホを見る時間の方が長くなった」と感じているのではないでしょうか。これは感覚の話ではなく、明確な数字として表れている事実です。

私たち自身、日々の業務を通じて広告の主戦場が変化しているのを肌で感じています。特に若年層をターゲットとした広告において、テレビよりもSNSや動画配信プラットフォームを活用する方が圧倒的に効率的である場面が多くなっています。

 

地域ごとに異なるメディアの価値観

とはいえ、地域によっては今もテレビCMが非常に重要なメディアであることも事実です。特に地方都市では、テレビを主要な情報源として捉える文化が根強く残っており、実際に地域での認知度向上にテレビCMが有効であるというケースもあります。

大切なのは「誰に何を伝えるのか」という基本に立ち返り、目的とターゲットに応じたメディア選定を行うことだと私たちは考えています。テレビが適切な手段であるならば、積極的にご提案しますし、他メディアのほうが効果的な場合は、きちんと理由と根拠を添えてご説明させていただきます。

 

可視化できるデータが、未来を変える

インターネット広告がここまで台頭してきた理由の一つが、「データの可視化」にあります。どれだけの人が見たのか、どこから流入したのか、どの広告がクリックされたのか──すべてがログとして残り、改善に活かせる資産となる。

この「数字に基づく判断」ができるのが、ネット広告の大きな強みです。一方で、テレビCMはその特性上、詳細な成果測定が難しいメディアです。「やってみないとわからない」が通用する時代ではなくなってきています。

 

本音を伝えることの難しさ

もちろん、私たちはクライアントの想いや信念を否定したいわけではありません。ただ、広告における“正しい判断”は、感覚や過去の成功体験だけでは語れない時代になっているのも事実です。

だからこそ、私たちはときに嫌われてもいいから、必要な情報は正直にお伝えするようにしています。過去には「そんなことを言われるとは思わなかった」と言われて、仕事にならなかったこともあります。でもそれはそれで構わない、と今は思っています。

私たちは、言われたまま作るのではなく、「本当に効果があるのかどうか」を一緒に考えるパートナーでありたいのです。

 

おわりに

広告の世界は、社会や技術の変化に合わせて、どんどん進化しています。その中で、テレビ広告という選択肢も、もちろん必要に応じてご提案します。ただしそれは、エビデンスをもとに、お客様にとって最適な施策を一緒に考える中で選ばれるべき手段であると私たちは考えています。

私たちは、すべてを知っているわけではありません。ただ、知っている限りの情報を丁寧に開示し、一緒に考え、最善を導き出す。そんな広告会社でありたいと思っています。

株式会社HET
長谷川 嵩